更新日:2026年09月14日
退職時の有給の取り方|全部消化する手順と拒否された時の対処法
退職を決めたものの、「有給が40日も残っている。全部使ってから辞めたい」と感じていませんか。
退職時の有給の取り方には、明確な手順があります。有給消化は労働者の権利であり、会社は原則として拒否できません。
とはいえ、「言い出しにくい」「人手不足で渋られそう」という気まずさや不安もあるはずです。本記事では、有給を無駄なくすべて取得する手順から、拒否された時の対処、買い取りの可否までをまとめて解説します。読み終えるころには、適切に有給を取得して退職するための道筋が明確になります。
退職時に有給は「全部」取れる?まず知るべき結論

結論から言えば、退職時に残った有給休暇は、原則すべて取得できます。
理由は、有給休暇の取得が法律で守られた労働者の権利だからです。会社の都合で一方的に拒否することはできません。まずはこの前提を押さえましょう。
有給消化は労働者の権利
有給休暇は、「労働基準法第39条」で定められた制度です。
一定期間勤務した労働者には、勤続年数に応じて有給が付与されます。これは会社が「与える恩恵」ではありません。条件を満たせば当然に発生する権利です。
- 雇い入れから6か月継続勤務
- 全労働日の8割以上出勤
この2つを満たすと、有給が付与されます。パートやアルバイトも、所定労働日数に応じて付与される点は見落とされがちです。
出典:厚生労働省 静岡労働局「労働基準法の概要(年次有給休暇・第39条)」
会社は原則「拒否」できない・退職日を越える時季変更はできない
会社には「時季変更権(じきへんこうけん)」が認められています。これは、労働者が希望した時季に有給休暇を与えることで事業の正常な運営を妨げる場合に、取得時季を別の日へ変更できる仕組みです。
ただし、退職日を越えて有給休暇の取得日を変更することはできません。退職日が決まっているため、有給休暇の取得日を変更する先の日がないからです。
つまり、「人手不足だから」「規則で認めない」といった理由で有給消化を拒否することは、原則として違法です。もし会社に有給を使わせてくれない場合でも、あきらめる必要はありません。
未消化のまま退職するとどうなる?(消滅・買い取り)
有給を使わず、残ったまま退職すると、原則その権利は消滅します。
もったいないと感じるかもしれません。退職日を過ぎた有給は、繰り越すことも取り戻すこともできないからです。
例外として、会社が任意で「買い取り」に応じるケースもあります。ただし買い取りは原則的な方法ではありません。まずは消化しきることを前提に、計画を立てるのが基本です。
権利について確認したところで、次は「では実際にどう取るのか」という具体的な手順を見ていきましょう。
退職時の有給の取り方【5ステップの手順】

退職時の有給の取り方は、次の5ステップで進めるとスムーズです。
有給休暇の消化日数によって、最終出勤日や退職日が決まるからです。順番を間違えると、消化しきれず損をする恐れがあります。ここでは失敗しない進め方を、順を追って解説します。
STEP1 残日数と退職希望日を確認する
まず、自分の有給残日数を正確に把握します。
給与明細や勤怠システム、または人事・総務への確認で分かります。前年度からの繰り越し分も含めて数えましょう。ここを曖昧にすると、後の逆算がずれてしまいます。
STEP2 有給を逆算してスケジュールを組む(最終出勤日の決め方)
残日数が分かったら、退職日から逆算してスケジュールを組みます。
ポイントは「退職日」と「最終出勤日」を分けて考えることです。最終出勤日とは、実際に出社する最後の日を指します。その翌日から有給消化に入り、退職日までの所定労働日に有給休暇を充てる形で、最終出勤日を逆算します。
残日数ごとの目安は、次の早見表で確認できます。
■ 有給消化 逆算早見表
| 残有給日数 | 消化期間の目安(週5日勤務・土日休みの場合) | 退職を申し出る推奨時期 |
| 5日 | 約1週間 | 退職日の約1か月前 |
| 10日 | 約2週間 | 退職日の約1〜1.5か月前 |
| 20日 | 約1か月 | 退職日の約1.5〜2か月前 |
| 30日 | 約1.5か月 | 退職日の約2〜2.5か月前 |
| 40日 | 約2か月 | 退職日の約2.5〜3か月前 |
※期間は平日換算です。土日祝を挟むため、実際のカレンダー上ではさらに長くなります。就業規則に定められた退職の申出期限も必ず確認しましょう。
■ 記入式テンプレ(自分の日程を逆算する)
次の順で埋めると、最終出勤日と申し出時期が決まります。
| 退職希望日:______年___月___日 残有給日数:______日(繰り越し分を含む) 退職希望日から、残有給日数分の「所定労働日」をさかのぼって最終出勤日を確認する 退職を申し出る日:就業規則の期限を確認したうえで、引き継ぎ期間を確保できる日 |
「想定より早めに準備を始める必要がある」と感じた方も多いはずです。日数が多い人ほど、この逆算を早めに済ませておくと安心です。
STEP3 退職の意思と有給消化を伝える(トーク例つき)
スケジュールが固まったら、直属の上司に退職と有給消化の意思を伝えます。
申し出る時期は、就業規則で定められた期限を確認し、できるだけ余裕を持って伝えるのが安全です。焦って直前に伝えると、消化期間が足りなくなります。
「何と言えばいいか分からない」という方のために、そのまま使えるトーク例を用意しました。
■ 基本
| 一身上の都合により、○月○日をもって退職したいと考えております。残っている有給休暇○日を取得し、最終出勤日を○月○日としたいと考えております。引き継ぎは責任を持って進めますので、日程についてご相談させてください。 |
■ 引き継ぎを不安がられた時
| ご心配をおかけします。引き継ぎ資料は最終出勤日までに完成させ、後任の方が困らないよう整えます。必要な情報は最終出勤日までに整理し、引き継ぎに支障がないよう対応いたします。 |
■ 日程を渋られた時
| 有給消化は労働者の権利と認識しております。引き継ぎには最大限協力しますので、消化のスケジュールについてご調整くださいますようお願いいたします。 |
ポイントは「権利を主張しつつ、引き継ぎへの協力も示す」ことです。この一言があるだけで、相手の懸念が和らぎます。なお、強く拒否された場合の対応は次章で詳しく解説します。
STEP4 退職届・引き継ぎを進める
意思を伝えたら、退職届を提出し、引き継ぎに着手します。
退職届には有給消化を踏まえた退職日を記載し、有給消化期間や最終出勤日は別途上司・人事と共有すると誤解が防げます。引き継ぎ資料は、消化に入る前に完成させておくのが理想です。
STEP5 消化期間中の過ごし方・転職活動の注意
有給消化中は、心身を休めつつ次の準備に充てられる貴重な期間です。
ただし注意点もあります。退職前の有給消化中は、まだ在籍中の扱いです。競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)など、在籍中に適用される就業規則がある点に注意しましょう。転職先の入社日が現職の退職日前になる場合は、双方の就業規則や社会保険等の手続きを確認しましょう。
ここまでが理想的な流れです。とはいえ現実には、有給消化を渋られたり拒否されたりする場面もあります。次章で、その対処法を段階的に見ていきます。
有給消化を拒否・引き止められた時の対処法

有給消化を拒否されても、打つ手は段階的に用意されています。
理由は、法令上のルールや公的な相談制度が整備されているからです。焦って問題を放置する必要はありません。まずは冷静に、次のフローで自分の状況に合った一手を選びましょう。
まずは、自分の状況がどのタイプかを確認しましょう。次の早見表で、次に取るべき対応が分かります。
■ 拒否タイプ別・対応フローチャート
| あなたの状況 | まず進むべき対応 | 主な相談先・手段 |
| ① 日程を渋られている | STEP1 社内で再交渉 | 上司・人事・労働組合 |
| ② 「認めない」と拒否された | STEP2で証拠を残し、STEP3・4へ | 社内相談窓口・労働組合・公的相談窓口 |
| ③ 退職そのものを認めてもらえない | STEP4 公的機関などに相談 | 総合労働相談コーナー・労働組合・弁護士など |
| ④ 会社に連絡すること自体がつらい・怖い | STEP5 専門家などに相談 | 労働組合・弁護士・適切な退職代行サービス |
フローの考え方
- まずは①②のように、社内での解決を試みます。
- 動かなければ、③のように公的機関へ段階を上げます。
- 精神的に限界の場合は、無理をせず④で専門家に頼って構いません。
「自分はどこに進めばいいのか」が定まると、焦りが少し落ち着くはずです。以下、各STEPを順番に見ていきます。
正当な理由のない有給取得の拒否や退職の妨害は認められない
大前提として、退職時の有給休暇の取得を一律に拒否することは、原則として認められません。
会社側は「後任がいない」「人手不足だから無理」といった事情だけでは、有給休暇の取得を拒否することはできません。また、期間の定めのない雇用契約では、原則として労働者から退職を申し出ることができるため、会社が退職そのものを妨げることは認められません。こうしたルールを知っておくことが、交渉時の判断材料になります。
STEP1 冷静に社内で再交渉する
まずは感情的にならず、社内で再交渉します。
有給消化が権利であることを、就業規則や法律を根拠に淡々と伝えましょう。引き継ぎ計画を提示すると、会社側の不安も和らぎます。「有給は取得しつつ、必要な引き継ぎは事前に行う」という着地点が、円満解決につながりやすいです。
STEP2 証拠を残す
交渉と並行して、証拠を残すことが重要です。
理由は、「言った・言わない」のトラブルを防ぐためです。口頭でのやり取りは後から覆されがちです。有給の申請や退職届は、記録が残る形で行いましょう。
- 有給申請はメールなど書面で送る
- 退職届は控えを取り、提出日を記録する
- 面談でのやり取りはメモや録音で残す
記録に残す際に、そのまま使える文例を紹介します。日付・氏名などは自分の状況に置き換えてください。
■ 有給休暇の申請メール例
| 件名:有給休暇取得の申請(氏名) ○○部 ○○課長 お疲れ様です。○○です。 下記のとおり、年次有給休暇の取得を申請いたします。 ・取得期間:○月○日〜○月○日(○日間) ・取得理由:退職に伴う有給休暇の消化 就業規則に基づき申請いたします。ご確認のほど、よろしくお願いいたします。 |
■ 口頭で流された時の「追いメール」例
| 件名:先日ご相談した有給休暇取得の件 ○○課長 お疲れ様です。 ○月○日にご相談した有給休暇取得の件につき、記録のため改めてメールにて申請いたします。 ・取得期間:○月○日〜○月○日(○日間) お手数ですが、申請内容をご確認いただき、受領の旨をご返信いただけますと幸いです。 |
■ 退職届の記載例(有給消化を踏まえた退職日)
| 退職届 このたび一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします。 |
※退職日は「有給消化が終わる日」に設定します。実際に出社する最終出勤日とは別の日になる点に注意しましょう。
■ 内容証明を使う場合のポイント
会社が退職届を受け取らないなど、意思表示をした事実を明確に残したい場合は、内容証明郵便を利用する方法もあります。
内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を差し出したかを証明する方法です。
ただし、内容証明を送れば問題が自動的に解決するわけではありません。トラブルが深刻な場合は、弁護士などの専門家に相談したうえで利用すると安心です。
STEP3 会社の相談窓口・労働組合に相談する
社内交渉で動かない場合は、第三者の窓口を頼ります。
社内に相談窓口やコンプライアンス部門があれば、まずそこへ相談します。労働組合がある会社なら、組合を通じて交渉する方法も有効です。個人で抱え込むより、状況が動きやすくなります。
STEP4 労働基準監督署・総合労働相談コーナーに相談する
社内で解決しないなら、公的機関に相談します。
労働基準監督署(通称「労基署」)は、労働基準法違反について対応する国の機関です。また、全国の労働局には「総合労働相談コーナー」があり、無料で相談できます。
相談前に、STEP2で残した証拠を整理しておくと話がスムーズです。
STEP5 それでも動かないなら|退職代行・弁護士などに相談する
会社が一切応じない場合の最終手段が、専門家への依頼です。
代表的な選択肢は、退職代行サービスと弁護士への依頼です。両者は対応できる範囲や費用が異なるため、自分の状況に合わせて選びましょう。
| 選択肢 | 有給交渉 | 費用の目安 | 向いている人 |
| 一般の退職代行 | 会社への「連絡代行」まで | 比較的安い | 会社に連絡すること自体が怖い人 |
| 労働組合が運営するサービス・弁護士 | 有給や未払いの「交渉」まで可能 | やや高め | 拒否・トラブルが深刻な人 |
有給休暇の取得について会社と交渉してもらいたい場合は、交渉に対応できるタイプを選びましょう。
やってはいけないNG対応(無断欠勤・感情的対立など)
一方で、避けるべき対応もあります。
権利があるとはいえ、有給休暇の申請をせずに一方的に欠勤することは避けましょう。就業規則上の懲戒など、別のトラブルにつながる恐れがあります。感情的に対立するほど、交渉はこじれます。「冷静に・記録を残して・段階を踏む」が鉄則です。
対処法の全体像がつかめたところで、次は自分の残日数に合わせた現実的なプランを考えていきましょう。
【残日数別】有給消化のモデルケース

有給の取り方は、残日数によって現実的なプランが変わります。
理由は、残日数が多いほど早めの申し出と調整が必要になるからです。ここでは代表的な2パターンで、具体的な進め方を見ていきます。自分に近いケースをイメージしてみてください。
10日程度残っている場合
有給が10日程度なら、比較的調整しやすいケースです。
最終出勤日の翌日から、約2週間の消化期間を確保するイメージです。引き継ぎ期間も取りやすく、円満に進めやすいでしょう。退職希望日の1〜1.5か月前に伝えれば、余裕を持って消化できます。
40日程度(前年からの繰り越しを含む)残っている場合
有給が40日近く残っている場合は、早めに準備することが重要です。
40日の有給休暇を平日に連続して取得する場合、単純計算で約2か月かかります。「40日も消化して大丈夫か」と不安になるかもしれません。しかし、有給消化は正当な権利です。日数の多さを理由に拒否することはできません。
ポイントは逆算です。退職日の2〜3か月前には意思を伝え、引き継ぎと消化を並行させます。人手不足を理由に渋られた時は、前章の対処法に戻って段階的に対応しましょう。
残日数ごとのイメージがつかめたところで、次は「どうしても消化しきれない有給」の扱いを確認します。
使いきれない有給はどうなる?買い取りと例外

退職日までに取得しきれない有給休暇は、会社の判断によって買い取られる場合があります。
有給休暇の買い取りは、「原則として認められないものの、退職時などには例外的に認められる」という扱いだからです。仕組みを正しく理解しておくと、損を防げます。
有給の事前買い取りは原則不可|退職時の未消化分は任意で買い取られる場合も
有給の買い取りは、在職中は原則として認められていません。
買い取りを前提にすると、有給休暇が本来の目的である「休むための制度」として機能しなくなるからです。ただし、退職時に取得しきれず残った有給休暇については、会社が任意で買い取ることが認められています。
注意点は「会社の義務ではない」ことです。買い取りに応じるかどうかは会社の判断に委ねられます。法律上、一律の買い取り価格が定められているわけではありません。過度な期待は禁物です。
退職日までに消化しきれない場合の対応
消化しきれないと分かったら、早めに会社と相談します。
取り得る選択肢は、次のとおりです。
- 退職日を後ろ倒しして消化期間を延ばす
- 買い取りに応じてもらえるか会社に打診する
- 会社が任意で応じる場合は、一部消化+一部買い取りを相談する
まずは全部消化を目指し、それが難しい場合は、退職日の調整や、会社が応じる場合の買い取りで補うのが現実的です。相談は口頭でなく記録に残る形で行いましょう。
ここまでの内容を踏まえ、よくある疑問をQ&A形式で整理します。
退職時の有給に関するよくある質問(FAQ)
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最後に、退職時の有給についてよく寄せられる質問に回答します。
Q. 退職時に有給を全部消化するのは非常識ですか?
A. 非常識ではありません。有給消化は法律で認められた権利です。適切に申請して取得しましょう。
Q. 有給消化を「認めない」と言われました。違法ですか?
A. 原則として違法です。退職日を越える形で時季変更することはできません。人手不足だけを理由に一律に拒否することはできません。
Q. 退職を1か月前に伝えても有給消化はできますか?
A. 残日数と引き継ぎ次第です。退職日までの所定労働日が足りない場合は、退職日の調整などを会社と相談します。
Q. 有給が残ったまま退職したらどうなりますか?
A. 原則として権利は消滅します。ただし退職時に限り、会社が任意で買い取りに応じる場合があります。
Q. 退職代行を使っても有給消化はできますか?
A. 可能です。ただし有給の「交渉」まで行うには、労働組合型や弁護士型を選ぶ必要があります。
疑問が解消できたところで、記事の要点をまとめます。
有給は堂々と取っていい権利

退職時の有給の取り方について、要点を振り返ります。
- 有給消化は労働基準法で守られた権利。会社は原則拒否できない
- 取り方は「残日数確認→逆算→意思表示→退職届・引き継ぎ→消化」の5ステップ
- 拒否されても、社内交渉→記録保存→社内窓口・労働組合→公的機関・専門家と段階的に対応できる
- 消化しきれない分は、退職日調整や買い取りで対応する
有給が40日残っていても、ためらわずに申し出ることができます。権利を知り、順番に進めれば、気まずさや不安を和らげやすくなります。